英会話の勉強を始めるにあたって、「英会話に文法は必要だから最初にしっかり学ぶべきだ」という考えもあれば、逆に「文法なんて英会話に必要ない」という考えもあります。また、「中学レベルの英文法を先にマスターしてから」という意見がありますし、「高校で出てくる文法項目まで復習したほうがいい」という人もいます。
英会話と英文法の関係について、個人的な考えは、「基本的な文法知識があったほうが、より効率的に英会話をマスターできる」ということです。文法の範囲でいえば、中学レベル、それも中学1・2年ぐらいまでの基礎知識があれば当面は十分だと思います。
具体的には、主語の後に動詞がくる語順ルール、基本的な疑問詞(what, when, where, who, why, howの5W1Hなど)の使い方、be動詞、一般動詞の現在・過去・未来、代名詞(I, my, me, mine, he, his, him, hisなど)、命令文、受動態の形、canなど助動詞の一部、ifやbecauseなどの基本的な接続詞の使い方、比較級の基礎知識、目的などを表すTO不定詞の知識など。これに加えて必要な単語・ボキャブラリーを知っていれば、英会話のかなりの部分をカバーすることができるでしょう。
試験に出るso that構文やtoo to構文など使わなくても自分の伝えたいことは他の表現で言えます。関係代名詞は会話で出てくるので使えるに越したことがありませんが、差し当たって初級者は深入りしなくてもいいと思います。また、高校で習う英文法の仮定法、分詞構文、倒置などは手を付けなくても問題ないでしょう。
文法力より語彙力
基礎的な英会話力をつけたいなら、中学1・2年レベルの基本的な英文法の知識を復習しさえすれば十分です。英会話を上達させるには、英文法の知識よりもむしろ、単語力、語彙力をつけることのほうがはるかに重要です。
例えば、「昨日新しい家に引っ越しをした」と言いたいとき、「I … new house…yesterday…」と引っ越しの英単語を知っていないと固まってしまうことでしょう。「引っ越しって英語で何?」が思い浮かばないため、会話が途切れてしまうことは珍しくないでしょう。
「引っ越す」と言いたいときは、moveが使えます。この単語を「動く、動かす」の意味だけで覚えていると上のような簡単な出来事すら説明できません。
もうひとつの例として、「身分証明書を持っていない」ということを言いたいとき、「I don’t have…」まで出てきて、「身分証明書って何て言うんだったかな。。。」と身分証明書に対応する英単語を知らないと言葉に詰まってしまいます。
文法的には「I don’t have + 名詞」と正しい語順で話し始めていますが、肝心の英単語を知らないため言いたいことを伝えられません。このように、必要な単語を知らないために自分の思いを伝えられないシチュエーションは、英会話初心者だけでなく中級者にもよくあるのではないでしょうか。
ちなみに身分証明書はidentification、略せばIDですでに日本語として一般的に使われています。写真付き身分証明書であればphoto IDでよく聞くフレーズです。
難度の高い英文を読むことや正確な英語の文章を書くためには、十分な文法知識が必要不可欠です。一方で英会話を主な目的とする場合、基礎的な文法をマスターしたら、次は単語・語彙力アップに力を入れたほうが早く上達します。苦手な文法に四苦八苦して立ち止まっているより、単語・語彙を増やして会話練習をしていくほうが英会話上達への近道です。