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もし中学生に戻ったらどんな英語の勉強をする?

新年のブログ第一弾としてこれまでの英語学習や指導経験から、「もし自分が英語を学び始めた中学生の頃に戻ったとしたらどんな勉強法をするか?」について書いてみたいと思います。 私が中学生時代を過ごしたのは昭和50年代の前半です。飛騨の山間部にある小さな町に住んでいて、普段の生活の中で外国人と接する機会は全くありませんでした。この時代にALTは存在せず、英語の授業は日本人英語教師だけで進められていました。町に英会話スクールはひとつもなく、補習用の英語塾が2つほどあったぐらいです。 ネイティブの生の英語を聞くとしたら、NHKの基礎英語シリーズ、FENなどのラジオ放送、またはラジカセで聞く教材カセットテープ(※CDが一般的になる前の時代です)だけでした。当然ながらインターネットはなく、オンライン英会話なんて全く想像できませんでした。こうして振り返ってみると、現在の英語学習環境と比べてずいぶん違うことに気づかされます。 今の経験を元に当時過ごした時代に中学生として戻ったとしても、いろいろ勉強のやり方を変えれば、圧倒的に効率よく英語・英会話を修得できるに違いありません。 しかし、今回は、インターネット、スマホ、パソコン、アプリ、オンライン英会話サービスなど現代のテクノロジー・サービスを活用することを想定して考えてみたいと思います。そのほうが、現在の英語学習者(※中学生に限らず、小学生、高校生、大学生から社会人までの英語初級から中級者を含め)にとって少しでも参考になると思いますので。 さて、中学生に戻ると仮定するわけですが、どのレベルを想定しましょうか。中1と中3ではレベルは明らかに異なります。より具体的にイメージできるように、多少なりとも学校で英語の授業を受けた段階の中学1・2年レベルに戻ったとしましょう。過去形や疑問詞の使い方など基本文法を学んだレベルです。 では、具体的な練習方法について順にまとめていきます。

1.文法例文集を使って音読・復唱の練習

文法項目別になった例文集(前に紹介した「毎日の英文法」など)を使って、徹底的に音読、復唱練習をします。ネイティブのモデル音声をできるだけ真似て音読、そして瞬時に復唱できるくらいにやりこみます。 この練習で英語の語順感覚、発音、アクセントを身につけ、短いセンテンスの意味を瞬時に理解するリスニング力を鍛えます。そして、学んだ例文を使って、頭の中でイメージしたことを、日本語を介さず口から自動的に出てくるようなトレーニングを行います。 関係詞など中3以降で出てくる文法は、簡単な解説を読み、あとは文法項目に該当する例文を音読・復唱する練習で自然に使い方を理解するようにします。文法書をじっくり取り組むというより、文法項目別に分類された例文を活用し、モデル音声を併用しながら音読・復唱できるようにすることで文法力をつけていくやり方です。わからない文法、理解しにくい文法はPCかスマホでネット検索し、自分が理解できるサイトの解説を参考にします。 この練習で、リスニング、スピーキング、文法の基礎力が養われます。特に日本人が苦手とするリスニング・スピーキング力の改善に大いに役立つのではないかと思います。

【自らの学生時代を振り返って】

大学を卒業して社会人になるまで、まったくといっていいほどリスニング・スピーキングにつながるような勉強はしていませんでした。その結果、簡単な英語すら聞けない、話せないという日本人によくあるタイプだったのではないかと思います。今から戻れるとしたら、ぜひこのトレーニング方法を取り入れてリスニング・スピーキング力の基礎を早い段階でつけておきたいというのが実感です。

2.まとまった長さの文を精読し、同じ文を使って読むスピードを上げる速読練習

文法項目別に分類された短い例文の音読・復唱練習がある程度進んだ段階で、まとまった長さの長文を読む練習を加えます。最初は100語程度からなる英文を使い、意味のカタマリ(主語とか前置詞句とか)ごとにスラッシュ( / )で区切っていきます。スラッシュで区切った英文にフレーズ訳がついたものを入手し、読解練習を行います。 例えば次のような参考書です。

【スラッシュ訳の例】

I went to Kanazawa by train last week to meet my younger sister. この文にスラッシュを入れる一例です。(※スラッシュを入れる位置は、慣れればスラッシュの数を減らし、間隔を広げることも可能です。) I went to Kanazawa / by train / last week / to meet my younger sister. (1) 金沢へ行きました / (2) 電車で / (3) 先週 / (4) 妹に会うために 文頭から、英語の語順に従って、 「(1) 金沢へ行きました」→「(2)電車で」→「(3)先週」→「(4)妹に会うために」 と順番に意味がわかれば、英文で何を言おうとしているのか容易に理解できるはずです。 一方、自然な日本語に和訳すると次のようになります。 「(4)妹に会うために、(3)先週 (2)電車で (1)金沢へ行きました」 後ろから前へ逆方向で意味を解釈する、いわゆる「返り読み」になります。 英語を自然な日本語に翻訳する時のように、「英語を日本語にして順番をひっくり返して理解する習慣」が強化されると、特にリスニングで致命的になります。上の例文のように簡単なセンテンスがひとつだけなら、ひっくり返し翻訳方式でも理解できるでしょう。しかし、連続して流れてくる英語の意味を即座に理解することは不可能です。頭の中で日本語変換と順序替えをしている間に、次のセンテンスに進んでしまいますので注意が必要です。
※ 程度の差はあれ、「英語を日本語変換、順序入れ換え」で英語を理解する習慣・クセは日本の学校教育と受験英語を通じて深く刷り込まれているというのが個人的な感想です。かつての自分がそうでしたし、現在指導している方にもよく見られる現象です。 試験問題によくある「下線部を和訳せよ」とか「下線部の意味を日本語で答えよ」といった問題をやりすぎると、「英語から日本語に変換して理解する回路」を強化し、「英語をそのまま理解する」という本来あるべき方向から離れていくと思います。 昔は、知識・技術輸入を目的として、「海外文献を日本語に翻訳」する優先度が高く、英語の試験の中で和訳問題が重要な位置を占めたのでしょう。そして今なお、その名残があるようです。 時代は移り変わり現代では、英語を英語のまま理解し、そして直接話す・書くなどアウトプットするコミュニケーションスキルが不可欠になってきています。 英語の試験は、TOEFL、IELTS、TOEIC のように、日本人に限らない非ネイティブ向けの試験で、問題、設問、選択肢、解答のすべてが英語のものが望ましいと考えます。大学受験も外部試験を活用するなど、ようやく好ましい方向に向かっているようです。

【精読のポイント】

初めに、スラッシュで区切った問題文の精読をします。知らない単語の意味を確認し、どのような理由で区切られているか理解しながら、スラッシュで区切ったブロック単位で英語を頭から意味をとっていきます。ここで重要なのは、各センテンスを完全な日本語に訳さないことです。スラッシュ単位で意味が取れればOKとします。 繰り返しになりますが、センテンスを自然な日本語に訳すと、返り読みなどが必要になり、英語をまとまった語順で理解するトレーニングに好ましくない影響を与えます。常に英語を日本語に訳して理解するクセがつくと、単語、フレーズが連なって流れてくるリスニングでついていけません、また、英文を読むスピードが上がってきません。
× 英語 → 日本語に訳す → 日本語を読んで元の英文を理解する
(※過去の自分です。大学を卒業して社会人になってからも、こんな感じで英文を読んでいました。)
英語 → 英語のまとまった単位の語順で理解する → 慣れると日本語を介在させないで英語のまま理解できるようになる

【速読練習の手順】

次に同じ文を使って速読練習をします。最初は音読、次に黙読で読むスピードを上げる練習を行います。ではステップを順に追っていきましょう。
  • 1.音声を聞いて発音、アクセント、リズムなど確認します。
  • 2.英文を理解できるスピードで黙読し、時間を計測します。
  • 3.もう一度音声を聞いて、1と同様の確認をします。
  • 4.英文の音読を3回以上繰り返します。できるだけモデル音声を真似ます。
  • 5.今度は黙読で読むスピードを意識しながら5回以上繰り返します。
  • 6.最後に黙読時間を計測します。
  • 7.最初と最後に要した時間を比較します。
練習後の読むスピードの目安として、はじめのうちは1分間に100語(100 WPM = words per minute *解説は前の記事ご参照)、慣れてきたら120語/分(120 WPM)、さらなる目標として150語/分(150 WPM)を目指すといいでしょう。ちなみに250語~300語/分までいけばネイティブ並みです。 注意点として、英語を読む練習をする時、常に音読する人がいますが、声を出すと読むスピードが落ちます。読むスピードを上げる練習では黙読のほうがいいです。あと、日常生活、仕事、英語の試験で何か読むときに通常声は出しません。音読しないと英語が理解できなくなるのも困りものです。音読、黙読などのトレーニング方法は、目的に合わせて使い分けるのがいいでしょう。 いろいろな英文を読む多読は必要かという点ですが、まずひとつひとつの文で精読・速読練習をし、その文を終えたら、新しい精読・速読用問題に取り組んでいくのがいいでしょう。精読・速読練習を積み重ねて読解基礎力がついてきたら、興味のある分野の英文の多読にチェレンジしていくといいと思います。

【自らの過去を振り返って】

中学、高校から大学受験までは、「英語ができる」=「正確な和訳ができる」と思い込んでいました。難関大学で出題されるような文の構造がとらえにくい下線部を、パズルを解くように頭をひねりながら、いかにして自然な日本語に訳すかというのが、英語の偏差値を上げるための必須条件でした。 そのため、英語は日本語に訳して、訳した日本語から理解するということが当たり前になっていました。当時はスラッシュ読みという言葉さえ聞きませんでした。読むスピードなんて意識したことはありませんでした。 後に、こうした日本語訳読式の英文の読み方を完全に軌道修正する時が来ました。アメリカの大学院に留学し、課題として読むテキストの量に圧倒されたときでした。 最初は、教科書のところどころに、大学受験の時にやっていたように日本語和訳を書いて読んでいましたが、毎日読まなければならない範囲が数十ページに及ぶと、和訳していてはついていけなくなりました。 大学受験時代でも、1から2ページあれば「相当長めの長文問題」という認識でしたが、これが数十ページとなると、もはや以前の翻訳スタイルの読み方では処理しきれないことが気づかされました。 あれこれ試行錯誤の末、教科書には単語の意味をメモする以外、一切和訳を書かないことにしました。英語のまま頭から意味をとらえるようなやり方に意識的に切り替えていきました。それでもアメリカ人の同級生や他の国からの留学生と比べて読むスピードは遅かったですが、英文を読む生産性を大きく向上させることができました。

3.ネイティブと英会話・アプトプット練習

1と2で英語のインプット練習がある程度できた時点で、実践英会話練習としてネイティブまたはネイティブクラスの先生と会話のトレーニングに入ります。コミュニケーションは、相手がいて成立します。日頃練習して学んだものを実戦で試すことで学習効果が高まります。 英会話練習の相手にだれを選ぶかですが、ネイティブ(または外国人でネイティブクラス)の先生がいいでしょう。英会話がネイティブ並みの日本人の先生でもいいですが、異文化体験も含めネイティブか英語が流暢な外国人の先生をおすすめします。 日本人の先生は、文法や構文読解を教えること、英会話・発音の基礎を教えること、あるいは英語の勉強の方法を教えながらコーチングすることに関しては、概してネイティブの先生より適していると思います。一方で実践的な英会話練習の相手とする場合、英語ネイティブかネイティブに近いレベルの先生のほうが効果的だと思います。 練習頻度は最低週1回、直接会ってマンツーマンのレッスンを受けたいところです。他のレッスン参加者に気兼ねなくアウトプットする時間を増やしたいのでグループレッスンではなくマンツーマンレッスンがいいでしょう。 同じ空間を共有し、身振り、手振りを交えながら英会話を実践することは大切です。週2回以上対面型マンツーマンレッスンを受けられるのであればそれに越したことはありませんが、予算の制約がありますので安価なオンライン英会話を併用していくといいでしょう。 オンライン英会話を含め、最低でも1日おきに相手と英会話をする機会を作ることですね。英会話に慣れてレベルが上がってきたら、自分の興味のあることに詳しい先生を選んで、そのトピックについて会話をすると一層効果的だと思います。

【自らの過去を振り返って】

大学受験にリスニング、スピーキングの試験がなかったため、英会話練習は大学3年になって英会話教室のグループレッスンに通うまでまったくやりませんでした。大学受験時の英語の偏差値はそれなりにあったのですが、「聞く」、「話す」はひどいものでした。レッスンのグループの中では落ちこぼれで、相手の言っていることを何度も聞き返し、簡単な英語すらまともに話せなかったため、嫌になって通うのをあきらめてしまいました。 こうしてみると受験制度の影響力ってきわめて大きいですね。英語は別に好きだったわけではなく、受験に必要だからやり、出題されそうなところに絞った勉強しかしませんでした。 昭和50年代から平成になり、40年近くの時を経て、ようやく「聞く」、「読む」、「話す」、「書く」の4技能が試される試験に移行するようですね。自分の時代にそうなっていたら、だいぶ違っていたと思います。 それはさておき、自主学習でインプットした知識を試す英会話練習の場があれば、ぜひ活用したいですね。ネイティブの先生を見つけるさまざまな方法がありますし、オンライン英会話も気軽に利用できます。

4.文法例文集、読解練習の問題文の中に出てくる単語に加え、単語集・アプリで単語力・語彙力を増強

英文法の基本ルール、英語構文の理解、読解のコツ、リスニング・スピーキング基礎力をマスターした後に、英語力を伸ばすための決定的な要素は「単語・語彙力増強」です。 十分な単語・語彙力があれば、細かな文法ルールを知らなくても、複雑な構文が理解できなくてもはるかに実用的です。やや強引でも、知っている単語の意味をつなぎ合わせれば、実際のところ何が言いたいのか、何が書いてあるか理解できることが多いでしょう。 さて、どのように単語・語彙力をつけていくかですが、「単語は文中で覚えること」は大切であることに変わりありません。そのほうが記憶に残りやすいのは確かです。しかし、英文の中だけで覚えていくと、語彙力を加速的に伸ばすことができません。 課題の英文中の単語を覚えると同時に、単語集・単語アプリを併用していくと語彙獲得スピードが上がります。単語集・単語アプリは、1日の中の隙間時間を活用できます。1日10分の単語学習は週合計70分になります。単語は接触頻度を増やすと覚えやすくなりますので、短い時間でも何度も何度も触れると効果的です。 アプリであれば前にご紹介したmikanもそのひとつです。他にも無料から有料までいろいろなアプリがありますので、自分に合ったものを選べばよいでしょう。紙ベースの単語集が好みであれば、気に入ったものを入手して実践するとよいでしょう。

【自らの過去を振り返って】

自分自身は、実はこれまでのほとんどの期間、「単語は文中のものを覚えるタイプ」でした。高校に入って旺文社の「赤尾の豆単」という単語集を与えられましたが、まともに手を付けませんでした。唯一本格的にやったのは、留学前のTOEFL対策用の単語集だけでした。 単語集を十分に活用した実体験がないため、比較的最近まで単語集は不要と考えていました。しかし、TOEIC講座で受講者の学習プロセスを観察して気づいたことは、単語集を併用した方が、スピーディーに単語・語彙力がつくことでした。 課題の中に出てくる未知の単語はそう多くはありません。また、抜き出して覚えるのは手間がかかります。面倒なことは後回しになり、単語を覚えることがおろそかになりがちです。 こうした問題を解決するために、単語集を導入しました。毎週覚える範囲を割り当てて、確認テストをするようにしました。単語集は隙間時間にできるため、全体の英語学習時間も増えました。しかも同じ単語を文中だけでなく、単語集の中でも見ることが増え、確実に定着率が上がってきました。

まとめ

もし自分が中学生に戻ったらどんな英語の勉強をするかという仮定で書きましたが、現役の中学生だけでなく、先取り学習した小学生、すでに大学生や社会人で英語をやり直したい方にも参考になるポイントがあれば幸いです。 今回の内容は、英語・英会話力の土台となる基礎を鍛えることを中心としています。続編として次のステップで何をやるべきかまとめてみたいと思います。